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乳がんと診断されたら

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大切な人への伝え方

がんと診断されたとき、誰にどこまで伝えたらよいか迷うかもしれません。特に、高齢の親や子どもへの伝え方については、多くの方が悩む問題です。ここでは、大切な人への伝え方のヒントを紹介します。

ひとりで抱え込まず、身近な人に相談する

家族や友人等に心配をかけたくないという思いから、病気のことを伝えたり自分の気持ちを話したりすることをためらう方もいますが、大切な人にこそ話してみましょう。家族や親しい友人等に辛い気持ちや不安を話すことで、落ち込んでいる気持ちが少し軽くなるかもしれません。

身近な人に伝えることが難しいときには、病院に設置されているがん相談支援センターなどの医療スタッフに話を聞いてもらうとよいでしょう。

身近な人(親)への伝え方

乳がんと診断されたとき、親御さんに伝えるべきか迷うかもしれません。しかし、何かの理由で疎遠になっているなどの特別な事情がない限り、話した方がよいでしょう。もし、伝えなかった場合、後になって知ったときに「どうして教えてくれなかったのか」と悲しませてしまう可能性があります。

ただし、伝えるタイミングと伝え方が大切です。治療方針やスケジュールなどある程度、先の見通しが立ってから伝えるとよいでしょう。何かが分かればその都度伝える方が安心される場合もありますので、どちらの方がいいのか親御さんの性格を考慮して選ぶとよいと思います。
同居している、近所に住んでいる場合には、面と向かって伝えることをお勧めします。遠方で暮らしている場合では、電話で伝えることが多いと思いますが、詳しい病状や今後の治療についてなど、うまく理解してもらえないかもしれません。

また、ご高齢の場合は、がん=不治の病というイメージを持っていることが多いため、生存率や憶測となるような情報は避け、なるべくショックが少なくなるように伝える工夫をしましょう。

小さなお子さんへの伝え方

乳児から幼児前期(0~3歳)のお子さんは、何かを認識したり理解したりすることや言語についても発達途上であるため、家族の状況を言葉で説明しても安心させることは難しいです。説明することよりも、生活の変化が最小限になるように心がけましょう。例えば、代わりに世話をする人をなるべく固定する、生活のリズムを維持する、スキンシップなどで愛情を表現すること等は、こどもの生活面や精神面において安心につながります。

幼児後期(3~6歳)のお子さんは、自分自身を中心に物事を主観的に理解する特徴があります。そのため、「自分がいい子にしていないから親が病気になってしまった」など、病気の原因が自分にあると思い込む傾向が強くなります。病気になったのは、お子さんのせいではないことを伝えて安心させることが大切です。また、病気の仕組みを大人のように理解することが難しいため、がんも風邪のように「うつる病気である」と誤解することも多いです。そのため、手をつないだり一緒にお風呂に入ったりしても「うつらない病気である」ということを伝えておくとよいでしょう。

伝えるときには、人形や絵本などを使うと理解しやすく興味を持って聞けます。直接的に自分や親のことを話されるよりも、自分の状況と共通するストーリを通じて間接的に理解していく方が安心して受け止めることが多いので、活用するとよいでしょう。

学童期のお子さんへの伝え方

学童期(6~12歳)のお子さんは、他者の視点に立って考えることができるようになるため、親の行動や家庭の雰囲気で何かが起こっていることを感じ取れるようになります。また、親の病気の原因は自分にあると考える傾向は続いているため、病気のことや生活の変化について伝えることが大切です。がんという病気や治療、副作用についても本や写真、可能であれば病院に来るなど具体性があると理解が進みます。医学的な言葉(手術、化学療法、放射線など)を子どもの理解に合わせ、身近でわかりやすい言葉に置き換えて説明することも重要です。例えば、手術について「ママが眠っている間にお医者さんが悪いところを取ってくれる」など伝えるなど、反応を見ながら言葉を選んで伝えるとよいでしょう。

また、学童期のお子さんにとって重要なのは、自分と同じ年代で同じ経験をしている仲間がいるということを知ることです。実際には同じ状況を共有できる仲間を見つけることは難しいため、本を通じて「同じ体験をしている仲間がいる」ということを実感できるようにするのも方法のひとつです。

思春期のお子さんへの伝え方

思春期のお子さんは、未体験なことも想像し考えることができるようになります。しかし、子どもから大人になっていく不安定な時期なので、感情的になったり自分の思いを話さなくなったりするなど、コミュニケーションが難しい特徴があります。

病気について伝える際には、一人前の大人として扱うこと、ごまかさずに真実を話すことが重要です。話した後、お子さんによっては全く関心がないようにふるまったり、涙を流したりするなど反応は様々です。「今は聞きたくない」という言動が見られた場合には、無理に話を続けず、聞きたくなったタイミングでいつでも話ができることを伝えるとよいでしょう。

また、思春期のお子さんにとっての一番の相談相手は、必ずしも親ではないということを理解しておくことも重要です。友人など家族以外の社会が重要と感じる時期であり、友人と話すことで気持ちの整理がついたり、気を紛らわせたりすることができます。お子さんの周囲に、自分の気持ちを話せる友人がいるかどうかを確認しておくとよいでしょう。

ーおわりにー お子さんと生活していく上でこころがけたいこと

これまで述べた具体的な方法・対策は有効ではありますが、感情や認識が未発達のお子さんにとってはやはり、闘病のため普段と変化した生活の中であってもお母さんの笑顔が何よりの安心材料になるでしょう。

家族それぞれの年齢、環境、価値観などは人それぞれ違うため一概に”これが良い接し方”というものはありません。例えば、脱毛の副作用が起きた場合、お母さん自身が不安そうな顔で「心配しないでね」と子どもに打ち明ける場合と、「たまには短い髪もいいわね。どのウィッグがママに似合う?」と笑顔で子どもに打ち明ける場合では、どちらがお子さんにとって安心感が得られるでしょうか。これからの治療を考えると様々な不安がよぎり、自信や笑顔を保てず弱気になることもあるとおもいます。そんな中で少しでもいつも通り過ごし、家族と笑顔で接していくためには、今後の治療方針や副作用対策を担当医と十分に話し合い、環境を整え、あなた自身が納得して治療にのぞむことが大切です。配偶者やパートナー、親戚、友人、教師、コーチ、あなたの治療チームのスタッフと共にまずは自身が抱える精神的不安を少しでも解消しながらお子さんと接していくことがとても大切です。

【参考図書】

  • 絵本「ママはかいぞく」 作: カリーヌ・シュリュグ 絵: レミ・サイヤール 訳: やまもと ともこ 出版社: 光文社
  • 絵本「おかあさんだいじょうぶ?」 作:乳がんの親とその子どものためのプロジェクト 絵:黒井 健 出版社:小学館
  • Webサイト がんになった親と子どものために 迷ったときに手にする本